【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
彼が猫を抱えたままゆっくりと立ち上がる。
彼の、猫に対する所作を目の当たりにしても、手を伸ばせないでいる私がいた。
お墓に埋めるのを手伝いたいと思ったけど、触れられもせず、ましてや直視することすら出来ない私に、一体何が手伝えるというのだろうと思い直す。
迷惑にはならないまでも、足手まといにはなりそうだ。
彼はそんな私に向かってというより、自分に言い聞かせるかのように、ぼそりと呟いた。
「そろそろ埋めてあげよう」
歩き出した彼は、ついていかない私を意に介する風もなく、道路を下って行こうとしている。
その先に川原があったはずだから、きっとそこへ行くのだろう。
ここで別れる前に、名前はきいておきたいと思った。
目指す高校の先輩だからというのではなく、私の中に芽生えかけたものがあったから。
それが何かはわからないけど、それを大切に心へおけば、受験も頑張れる気がした。
同じ高校へ行けばまた逢えるかもしれないという、希望。
ううん、きっと、逢えるはず。
だから私は、彼の背中に向かって、名前をきいた。
振り向いた彼は、優しく笑った。
『ユキト』
真っ白な、雪のような、ひと……