【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
舞い上がりそうな気持ちを何とか抑えて、
私はユキトさんに挨拶を返した。
ユキトさんだけでは良くないと思って、
ひとりひとりではないにしても、何度か頭を下げては「おはようございます」と呟いて。
そうして何日目かのある日、意を決して話しかけたのだ。
最初はきょとんとしていたけど、
猫のお墓参りをと言ったら、「あのときの子か」と笑いかけてくれた。
でもユキトさんはすぐに眉を下げて、
「猫のお墓参りは、しないほうがいいんだって。
いつまでも地上で優しくされたら、猫が天国へ行くのを躊躇ってしまうから……」
と言った。
だから結局、お墓参りはかなわなかったけど。
それでも『あのときの子か』と思い出してくれたのは嬉しくて。
しばらくは家族にも不安がられるくらい、上機嫌な日が続いた。
ただ、その後の挨拶は他の子と同じだったから、
顔を覚えられてはいないんだろうなと思ったけど。
話をしたのは、それっきりだったし。
なかなか話しかけるタイミングをはかれなくて、というより、
話しかける勇気がなくて。
猫のお墓参りを断られてしまえば、何の接点も見いだせなかったのだった。