【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
風が髪をいたずらに舞い上げる。
エンジンの音がカラダを伝い、心臓を震わせる。
流れる景色は、映画のエンドロールみたいにただ目に入ってくるだけなのに、私の気持ちを高揚させる。
向かう先がわからないからかもしれない。
最初は見たことのある風景だったけど、いつの間にか辺りの景色は知らない場所へと変貌していた。
どこへ連れて行かれるのかな。
期待はあるけど不安がないのは、さっきの不器用な笑顔を見たからだろうか。
いやでも私はあんな笑顔で騙されたりしないんだから。
秋月会長と言えば、いつも無表情で、世の中面白いことなんてひとつもないって顔をしていて、まさに冷血漢のイメージ。
態度も上から目線って感じ。
まぁひとつ残らず、私が感じたイメージだけど、大半の生徒が思ってることでもあったりする。
そもそもさっき、本当に笑った?
私の勘違いじゃないの?
なんて考えてたら、
信号待ちで、遠慮がちに掴まっていた両手を、無造作に引っ張られた。
不意をつかれ、私の鼻先が秋月会長の背中にぶつかる。
「ぎゃふっ」
可愛らしさのカケラもない声が出てしまった。