【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ


流れた涙は多くはなくて、声がもれることもないまま、ひいていった。


……弱り目に祟り目は違うか。


涙が止まり、冷静さを取り戻して自分自身に突っ込みをしていると、静かにバイクが停車をし、エンジンが切られた。


斜めに傾けられたので、降りろということだと認識し、私はそろそろと地面に降り立つ。


……声くらいかけてくれてもバチはあたらないと思う。

しかしおかげで泣いたことがバレないわけだから、私は黙っていた。



ヘルメットをとり、周りへと視線をめぐらす。


木々の中にポツンと駐車場があって、目の前にはキレイに整備された芝生が、なだらかな傾斜となって広がっていた。


小高い丘になっている中ほどに二つ、木製のベンチが並んでいて、その後ろには太い幹の木。


背丈のあまり高くない、それでもゆうに私の2倍近くはありそうなその木は横に長く枝を広げていて。


空は雲の殆どない、爽やかな快晴。


真っ青な空に、目のさめるような鮮やかな緑の葉、そしてベンチ。


写真にしたらとても映えるだろう光景が、そこにあった。


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