【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
秋月会長はバイクを降りると、フルフェイスのヘルメットを外し、うざったそうに前髪をかきあげた。
その時まだ眼鏡をかけてなくて、刹那、素顔があらわになる。
心を裂くような、鋭い視線。
保健室でみた、気高い孤狼のような。
冷静さのなかに激しさを秘めているような、あの瞳。
私を見ず、その視線は遠くに向かっているのに、ぎゅっと心臓が畏縮し、締め付けられる。
しかしそれは一瞬で、すぐに眼鏡を掛けた秋月会長はいつもの、表情が読めない鉄仮面だ。
彼は、連れて来た私の存在を忘れたかのように、ひとりでベンチに向かって歩き出した。
一緒に歩きたいわけじゃないけど、ここまで完全無視を決め込まれると、なんだか苛立たしい。
秋月会長の数歩うしろを、私もベンチへと向かった。
歩き出してみると、芝生は思った以上に傾斜があって、運動が得意ではない私には、すぐに足が重くなりはじめる。
ところどころに小さな掘り返したあとがあるのも、歩きにくさを誘発させている。
ねをあげそうになった頃、ベンチに到着した。