【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
翌朝。
気持ちがモヤモヤとして昨夜はあまり眠れなかったからか、玄関を出たのはいつもよりも遅い時間だった。
「げ……」
門を出て道路に足を踏み出した瞬間、
視界に赤が飛び込んで来た。
私はそのまま回れ右して家の中へ帰りたいと思った。
実際に門を戻って、玄関の扉へ手がかかる。
刹那、
ゴン、と音がして、私の視界に火花が飛び回った。
玄関の扉が不意にこちら側へと開き、
額に激痛。
「何やってんの」
ようやく開けた瞼の中はまだチカチカしていたけど、
呆れた声は母のものだとわかった。
「あいたた……」
抗議がてらに言った声で、母にきちんと届いたのは表面的な言葉だけだったらしい。
いきなり扉を開けるのは仕方ないにしても、私にぶつかったことに対しては謝罪をして欲しかったのだが。
「これ、お弁当」
突き出された昼食に、私は簡単に意趣を翻した。
お弁当を忘れた私が悪いです、ええ。
「あら?」
額を抑えながらお弁当を受け取った時、
母は、実娘さえ久しく聞いたことのないような、
余所行きの声を上げた。