金魚玉の壊しかた
父が失脚する前──


永代の家老を務めてきた雨宮はかなり裕福な家だったので、

幼少の頃から絵を描くことに執心だった私を見た家の者たちは、
特権階級の娯楽として、江戸で評判の絵師を招いたりして英才教育を施してくれた。


そのおかげで、

未熟な腕とはいえ絵草紙の挿絵やら何やら、そこそこ仕事はこなせていたのだが……


肝心の自分の絵はちっとも評価されない。



二年が経ち──

いい加減、生まれ育った国を捨て、
江戸に上ってちゃんと絵師のもとに弟子入りしようか、
昔屋敷に来てくれた師匠を訪ねてみようかと、

私がそんなことを考え始めた頃だ。


始めて私に、生き物の不思議な絵を描いてほしいという仕事の依頼が来た。




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