金魚玉の壊しかた
このとき私はどんな表情をしていたのか──虹庵は、くすりと笑って

「突然、このような話をして、驚かせてしまってすまない」

と詫びた。


「返事は急がないから、ゆっくり考えてみてはくれないだろうか」


これまで気がつかなかった。


落ち着いた響きの虹庵の言葉は、
包み込まれるように温かく
染み入ってくるように耳に心地よくて──

円士郎を凌ぐ剣の達人であるとも聞くのに、
ギラギラした円士郎の言葉とも違い、

同じ年上の人であっても、
いつも私の心をざわつかせる遊水の言葉とも違っていた。


彼らにはなくて

彼に確かに存在しているもの。


それは清冽な水の流れのように押し寄せて来て、

冷たく
残酷に

視界の先に見通せた。
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