金魚玉の壊しかた
虹庵が無言で座り直した。

相変わらず温かい表情を浮かべたままの彼の顔を見つめて、くじけそうになる。


けれど、


答えなければ。


彼の真っ直ぐな言葉に、偽りで返してはいけない。


私は、気を抜けば瞳からこぼれ落ちようとする雫を懸命にこらえて、





この優しい人に向かって、畳に手をついて頭を下げた。





「虹庵殿のお話、私にはお受けすることができません……!」




何かが私に告げた。


今、この瞬間
虹庵との偽りの時間が終わったのだと。




「私は、元仕置き家老の──雨宮の娘です」


私は、夢のように浸り続けてきたガラス玉の世界を壊して、自らの素性を明かした。
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