金魚玉の壊しかた
すぐさま、そうだと答えたかった。

しかしできなくて、愕然とした。



「私では──駄目だということなんだね」

と、虹庵は優しい表情と声音のままで言った。



体中を流れる血液が一気に冷えた気がした。

否定しようとしても、言葉が出てこない。



私の沈黙は、何よりも雄弁な肯定となって虹庵に届く。
そう理解していても、私は否定のための言葉を何一つ思い浮かべることができなかった。


それが事実だから。


そういうことなのだろうか。



私は、こんな優しい人を傷つけている。
傷つけてしまった。
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