金魚玉の壊しかた
暗い長屋の中に一人取り残されて、私は途方に暮れた。

遊水にちゃんと説明しろ?

あんな場面を目撃されて、しかもその前には円士郎に告白紛いの真似をしてフラれて、どんな言葉で遊水に弁明しろと言うのだろう。


そもそも、円士郎が追いかけて行ったところで、遊水がここに──私のそばに──もう一度戻って来てくれるかどうかもわからない。


何故、こう思ったのか──


これまで共に過ごした時間から直感的に、
私は遊水が

己に対する裏切りや敵対を決して許さない

そんな人間のような気がしていた。
私の知らない彼のこれまでの人生が、そうやって生きることを彼に強いてきて、彼をそんな人間にしたのではないかと、

そんな気がしていた。


「円士郎様なら裏切っても許してくれると思うからだろう」


いつか会話の中で彼が口にした言葉はそのまま、「しかし自分は裏切った者は絶対に許さない」と言っているように聞こえた。


絶望的な気分だった。


言い訳などしても逆効果で、何を言ってもきっと彼が私を許してくれることはないだろうと思った。
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