金魚玉の壊しかた
ざあざあと雨の音がする。


薄暗く青い水の中にいるようだった。


藍色の水底で、何度も何度も唇を重ねて、


しかし遊水は、決してそれ以上のことはしなかった。


私の帯を解くことも。

着物の奥へ指を滑り込ませることも。


私はどうしてなのかと問うた。

私は構わないとも告げた。


けれど、彼は「駄目だ」と微笑んで、



「亜鳥は……武家のお嬢さんなんだろう」



そう言った。



「男を知らないのだってわかる。俺なんかが傷物にはできない」



瞬間、
びいどろの世界に、罅が入ったのかと身を強ばらせた私に、

円士郎様と違って、俺はどこの御令嬢かなんざ調べてねえさと遊水は言った。
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