金魚玉の壊しかた
それから、

困惑気味の瞳で苦笑しながら私を見つめた。


「円士郎様に言わせると、俺が亜鳥のことを知らねえままでいるのは許されないことなんだそうだ。俺が手出ししていい相手じゃないとも言われたぜ」


私は驚いて、円士郎が遊水にそんなことを言ったのかと信じられなかった。


「そんなこと、身元を知らなくても──亜鳥が武家の娘って身分だけで、十分心得てるつもりだったんだがな」


遊水は苦しげに、整った顔を歪めて、


「俺はな、ヤクザ相手の裏家業をやってる」


突然、そんなことを口にした。


「人心を惑わして操る始末屋みてェな仕事だ」

「な……何を言い出すのだ!?」

「城下じゃあ、操り屋で通ってる。人だって何人も殺めてきた」

「言わなくていい──……っ」


彼がしたように、今度は私が遊水の唇を私の唇で塞いで──


そのまま、もつれ合って倒れ込んだ。


ぞっとした。


聞きたくない。
聞いてしまえば、私も明かさなくてはならなくなる。

この最後のびいどろの世界を


壊したくない。
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