金魚玉の壊しかた
彼の上に乗って、
その顔を見下ろして

私は必死に言った。

「そんなこと知らなくていい。何も知らなくても、私はあなたを──」

「聞け」

そんな私に有無を言わさぬ口調で短く告げて、

遊水は下になったまま私の体に腕を回して、優しく抱き締めた。


寝そべった彼の胸に沈み込みながら、首を動かして顔を見ると、遊水の目はこちらを向いていなかった。

緑色の瞳は暗い長屋の天井を虚ろに見上げて、私を抱いた腕に力を込めた。


「俺は、亜鳥に今触れているこの手でも、そして直接自分の手を使わない手段でも、たくさんの人様の命を奪ってきた。それだけじゃない」


私は遊水の着物をぎゅっと握った。

今日の彼は棒手振の仕事着ではなく、たまに見せる着流し姿だった。


「俺はな、昔、盗賊だった。島に送られるようなヘマはやってねえがな」


彼の腕の力が緩んで、
見上げると、遊水の瞳は私を映していた。


「悪党なんだよ、俺は。
こんな男に触れられてるだけで、恐ろしいだろう」


泣いているような目で、遊水は悲しそうに笑った。
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