金魚玉の壊しかた
「まさか彼にこんな才があるとは、私も意外だったんだが──」


虹庵はその『甥』とやらに関してそんな風に語って、

それから私をしげしげと見つめた。


「実はその甥っ子というのが、どこか君に似ている気がしてね」

──私に?

私が眉をひそめていると、


「うーん、いやまあ性格も何も全然似ていないんだが……似ているんだ」

と、虹庵は意味不明のことを言った。


「何と言えば良いのかな……

君と話していると、私は時々、その甥っ子と話しているような気分になるとでも言うのか──

君の言葉に対して、

『ああ、彼もおそらくそう言うだろうな』

と思う瞬間があるんだよ」


ほう?


少し興味をそそられた私に、虹庵は

「機会があれば、そのうち紹介しよう。
絵の話などをしても、気が合うかもしれないしね」

そう言って──


その紹介の機会というものがやってくることはないまま、

単なる社交辞令として私がその話を忘れかかった頃、




唐突に、

嵐のように、


そいつは私の前に現れた。
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