金魚玉の壊しかた
懐には懐剣もあるがこの場合、武器としては包丁のほうが頼もしい気がした。


「ん?」


包丁を構えた私の姿を見て、一瞬眉根を寄せた男は──


「うおわぁっ!?」


そのまま私が男に向けて包丁で斬りかかると、驚愕の声を上げた。


「っぶねえ! てめえ、いきなり何しやがる!?」

「やかましい。それはこちらのセリフだ」


包丁を振り回しながら私は怒鳴った。


「押し込み夜盗か辻斬りか知らんが、とっとと出て行け!」

「待て待て待て待て、違うって!」


男は慌てた様子で叫びつつも、私の振り回す包丁を余裕でひょいひょい避けている。

私は焦った。
こちらは突き殺すつもりだというのに、狭い室内にも関わらず掠りもしない。


やがて、


「待てっつってんだろうが!」

男は包丁を握った私の手をつかんで、楽々と捻り上げた。

「う!?」

つかまれた腕に凄い力が加えられ、堪らず包丁を握る手が弛んだところを、包丁を取り上げられる。

なおも暴れようとしたが、虚しくあっさりと組み伏せられた。
< 19 / 250 >

この作品をシェア

pagetop