金魚玉の壊しかた
しばらくして襖を開け戻ってきた青文は寝間着姿で、私は一瞬、甘い想像をしたのだが──



現実はどこまでも私に厳しかった。



彼は覆面をとり、正座した私の正面に座って

何故か手にしていた──鞘に納められた刀を



突きつけるようにして私に差し出した。


カチャリと、鍔鳴りがした。

町人の姿の遊水を知る私には、慣れた様子で刀を手にする彼の姿はひどく不似合いで不自然に見えた。



「とれ」


「な……何を……」



震える声で拒む私の手に、彼は無理矢理刀を握らせた。



リイ、リイ、と変わらず夏の虫が鳴いていた。
< 204 / 250 >

この作品をシェア

pagetop