金魚玉の壊しかた
「何の真似だ?」

引きつった笑いで、
手の中でずしりと重みを主張している刀と、彼の顔とを見比べると

彼はニコリともしない冷たく真剣な表情で私を見つめていて、

怖くなった。


「お前が知りたがっていた真実を教える」

「な……なんのことだ……?」


これ以上何を教える気なのかと泣きそうになりながら尋ねると、


「五年前の、雨宮仕置家老失脚の真相だ」


彼は硬い面持ちでそう言って

水底で舞っていた砂利が落ち着き水が澄み渡るように、すうっと私の頭は冷静さを取り戻した。


武家の娘としての亜鳥が、家の没落の原因に対して絶大な興味を示し、知りたがって──

揺れていた私の芯の部分がしゃんと据わった。


そんな私の様子を認めて、青文は満足そうに一つ頷き「よく聞け」と言って語り始めた。


「世間では、あの事件は私の暗殺を謀った雨宮殿が失敗し、下手人の堀口文七郎の口からその名が知れて、本人には切腹、雨宮家は減石処分となったと言われているが──」


そうだ、お家取り潰しを免れないだろうと覚悟していたところを、彼の助けによってその程度の処分で済んだのだ。


「──実際は、違う」


違う?


「いったい何が違うのだ……?」

「私は一方的な被害者では断じてないという点においてだ」


どういう意味なのかと、私が息を止めて見つめる前で、

あの事件の真相はな、と彼は言った。


「お父上と私は互いに謀を巡らせ──お父上は敗北し、私が勝った。そういうことだ」
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