金魚玉の壊しかた
「互いに……だと?」
「そうだ。お父上と私は対立を繰り返し──五年前、私を闇討ちにして亡き者にしようというお父上の企みに気づいた私は、一計を案じた。
円士郎殿のお父上、結城家御当主である晴蔵殿と共謀してな」
結城家も──絡んでいるのか。
それは、私が初めて聞く話だった。
「私と何度か手合わせして武芸の実力をご存じの晴蔵殿が、わざと私よりも腕の劣る者をお父上に下手人として推挙し、その者に私を襲わせて──私は当然難を逃れるが、襲われたという揺るぎない事実を手に入れる。
そして下手人をその場では敢えて逃がし、その下手人の仕業に見せかけて──雨宮家に集まって事が上手く運ぶのを待っていた私の敵対勢力者たちを、晴蔵殿が雨宮家からの帰り道で闇討ちにし、一掃したのだ」
「な──」
「その後、泳がせていた下手人の堀口を捕らえ、彼の口からお父上の名が首謀者として挙がったことにして──全ての黒幕をお父上に仕立て上げて失脚させる。
これが、私の作った筋書きだった」
私は目を見開いた。
心臓がどくどくと、嫌な音で鳴り続けていた。
もっとも、と彼はやや苦笑気味に口元を歪めた。
「実際には私の筋書き通りに事は運ばなかった。
逃した堀口はよりによって晴蔵殿がご不在の結城邸に逃げ込み──幼い円士郎殿とおつるぎ様に見つかって追いつめられ、晴蔵殿の御側室を人質にとる真似をした挙げ句におつるぎ様によって斬り殺された。
死人に口なしで、その後は当初の予定通り堀口が語ったことにしてお父上を黒幕に仕立て上げたがな」
円士郎殿と、おつるぎ様までもが──関係していた……?
「だからこの真相は、私と晴蔵殿の他に、円士郎殿やおつるぎ様も知っている。だが、彼らは巻き込まれただけ。亜鳥の仇ではない。
晴蔵殿とて、私の頼みで家中の腐敗を一掃するため手を貸して下さったにすぎない。
亜鳥の仇はこの私──全ての筋書きを作ったこの伊羽青文だ」
「そうだ。お父上と私は対立を繰り返し──五年前、私を闇討ちにして亡き者にしようというお父上の企みに気づいた私は、一計を案じた。
円士郎殿のお父上、結城家御当主である晴蔵殿と共謀してな」
結城家も──絡んでいるのか。
それは、私が初めて聞く話だった。
「私と何度か手合わせして武芸の実力をご存じの晴蔵殿が、わざと私よりも腕の劣る者をお父上に下手人として推挙し、その者に私を襲わせて──私は当然難を逃れるが、襲われたという揺るぎない事実を手に入れる。
そして下手人をその場では敢えて逃がし、その下手人の仕業に見せかけて──雨宮家に集まって事が上手く運ぶのを待っていた私の敵対勢力者たちを、晴蔵殿が雨宮家からの帰り道で闇討ちにし、一掃したのだ」
「な──」
「その後、泳がせていた下手人の堀口を捕らえ、彼の口からお父上の名が首謀者として挙がったことにして──全ての黒幕をお父上に仕立て上げて失脚させる。
これが、私の作った筋書きだった」
私は目を見開いた。
心臓がどくどくと、嫌な音で鳴り続けていた。
もっとも、と彼はやや苦笑気味に口元を歪めた。
「実際には私の筋書き通りに事は運ばなかった。
逃した堀口はよりによって晴蔵殿がご不在の結城邸に逃げ込み──幼い円士郎殿とおつるぎ様に見つかって追いつめられ、晴蔵殿の御側室を人質にとる真似をした挙げ句におつるぎ様によって斬り殺された。
死人に口なしで、その後は当初の予定通り堀口が語ったことにしてお父上を黒幕に仕立て上げたがな」
円士郎殿と、おつるぎ様までもが──関係していた……?
「だからこの真相は、私と晴蔵殿の他に、円士郎殿やおつるぎ様も知っている。だが、彼らは巻き込まれただけ。亜鳥の仇ではない。
晴蔵殿とて、私の頼みで家中の腐敗を一掃するため手を貸して下さったにすぎない。
亜鳥の仇はこの私──全ての筋書きを作ったこの伊羽青文だ」