金魚玉の壊しかた
行灯の光を照り返して不気味に光る刃を向けられても、何の動揺も示さず、金の髪の男はただ黙って翠の瞳に私を映していた。


「何故だ!?」


叫びながら、私は知った。



私と遊水が浸っていたびいどろの世界が今、

粉々に壊れたのだと。



「どうして私にこんなことを教えた!?」


止まっていた涙が、再び頬を流れ落ちた。


本気で惹かれ、恋した人こそが、

父を死に追いやり、
母を苦しませて、
家を没落させた、

仇だった。


そんな真実など、知らずにいたほうがずっと幸せだったのに──。


「どうして──私を、何も知らぬままにしておいてくれなかったのだ!?」


「お前が、武家の女として生きる道を選んだと知ったからだ」


泣き叫ぶ私を見上げて、彼は静かでありながらもはっきりとした口調でそう答えた。
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