金魚玉の壊しかた
全身の力を込めて、刀を首筋にあてがう青文の手から引き離し投げ捨てた。


驚いたように見開かれた愛しい緑色の瞳を睨み据えて、


「許さない」


と、私は繰り返した。


「絶対に許さない、こんな風に死ぬのは」

「なに……?」

「あなたは、私の父を死に追いやり、我が雨宮家を没落させ、私の人生も狂わせた!
そこまでして今の地位に居座り続けながら、あっさり命を手放すなど──ふざけるな!」


彼はしばし呆気にとられた様子で、打ち捨てられた刀と私とを見つめていたが、やがて狂ったように笑い始めた。


「それが、お前の出した答えだと言うのか!」

「そうだ」

「それが、私をこの場で殺さぬ理由だとでも言うのか!」

「そうだ」

「傑作だ! 生まれながらの武家の息女ともあろう者が、仇一人眼前にして討てぬとは!」


お前の本音を言い当ててみせようか、と彼は嘲りながら言った。


「亜鳥、お前はこの期に及んでなお、惚れた遊水の影を私に見ているのだよ!
武家の娘ではなく、ただの町娘のように!

父親の無念を晴らすことよりも、己の好いた男を生かすことを考えるとは──なんと愚かな女だ!」
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