金魚玉の壊しかた
件の有名人が目の前に現れたということにも驚いたが、
「虹庵先生の甥が、結城円士郎──?」
私の驚きの半分はこれ。
「虹庵先生は、結城家の人間か?」
「ああ、先生は俺の親父の弟だぜ。三男だって聞いてる」
信じられない気分で私が呟くと、結城円士郎はそう言った。
結城家ほどの家柄なら、三男に生まれていても良い養子縁組の話がいくらでもあるだろう。
それを市井に身を落とすなど──
医者になるにしても、虹庵ほどの腕と身分があるならば町医者ではなく御用医になることができるだろうに。
「何故、虹庵先生はこんな所で町医者をやっているのだ?」
呆然となる私に、円士郎は綺麗な顔をややうつむき加減にして微笑──いや、苦笑した。
「さァね。そんなことは本人にでも聞けよ」
「あの人も相当変わった人だな……」
「まあな」
「……──で?」
私は改めて、突然の住居侵入者を睨みつけた。
「こんな時間に人の家に押し入って、貴様は何のつもりだ!?」
刃物で私に斬りつけられても、この男は刀を抜く素振りすら見せなかった。
今も、私から奪い取った包丁を片手で弄んではいても、危害を加えてくる様子はない。
とりあえず、斬り殺されたり無理矢理手込めにされたりする危険はなさそうだが……。
「いや~、ちょいと夜遊びで遅くなってね」
円士郎は悪びれた様子もなく、初対面の私に気安い口調で言った。
「虹庵先生の甥が、結城円士郎──?」
私の驚きの半分はこれ。
「虹庵先生は、結城家の人間か?」
「ああ、先生は俺の親父の弟だぜ。三男だって聞いてる」
信じられない気分で私が呟くと、結城円士郎はそう言った。
結城家ほどの家柄なら、三男に生まれていても良い養子縁組の話がいくらでもあるだろう。
それを市井に身を落とすなど──
医者になるにしても、虹庵ほどの腕と身分があるならば町医者ではなく御用医になることができるだろうに。
「何故、虹庵先生はこんな所で町医者をやっているのだ?」
呆然となる私に、円士郎は綺麗な顔をややうつむき加減にして微笑──いや、苦笑した。
「さァね。そんなことは本人にでも聞けよ」
「あの人も相当変わった人だな……」
「まあな」
「……──で?」
私は改めて、突然の住居侵入者を睨みつけた。
「こんな時間に人の家に押し入って、貴様は何のつもりだ!?」
刃物で私に斬りつけられても、この男は刀を抜く素振りすら見せなかった。
今も、私から奪い取った包丁を片手で弄んではいても、危害を加えてくる様子はない。
とりあえず、斬り殺されたり無理矢理手込めにされたりする危険はなさそうだが……。
「いや~、ちょいと夜遊びで遅くなってね」
円士郎は悪びれた様子もなく、初対面の私に気安い口調で言った。