金魚玉の壊しかた
そんな彼の様から、
成る程、こういう男か──と、
私は、理解した。
こいつは……モテるはずだ。
根は優しい質なのだろう。
一見粗暴で横柄な振る舞いにも関わらず、根本の所では相手への気遣いもちゃんとあり、気遣いをためらわず即座に態度で示せる。
最初に思い切り不快な思いをした分、
後の優しい態度は衝撃的で、際立って印象に残った。
ヤバいぞ、
出会ってわずかだというのに、
この短時間で、免疫のない私なんて既に惚れそうだ。
ともかく、
私は言われたとおり、筆を握ってみる。
もともと手を強く握れば痛む程度だったこともあって、特に絵を描くことに支障はなさそうだ。
結構ちゃんとした処置だった。
私が感心すると、
「虹庵先生から、傷の手当てについては一通り教えてもらってるからな」
と、彼は言った。
斬り合いになって、自分や他の者が傷ついた時のため──というところだろうか。
若いのに、なかなか一人前の武士らしい心がけだ。
「それで、いつもそんなものを持ち歩いているのかね?」
塗り薬を示して私は訊いた。
「ああ、これは──持ち歩けって言った奴がいるんでね」
「女か」
「……まあ、女だな」
薬を彼に持たせた相手を思い浮かべているのか、優しい目つきになって円士郎はそう言った。
成る程、こういう男か──と、
私は、理解した。
こいつは……モテるはずだ。
根は優しい質なのだろう。
一見粗暴で横柄な振る舞いにも関わらず、根本の所では相手への気遣いもちゃんとあり、気遣いをためらわず即座に態度で示せる。
最初に思い切り不快な思いをした分、
後の優しい態度は衝撃的で、際立って印象に残った。
ヤバいぞ、
出会ってわずかだというのに、
この短時間で、免疫のない私なんて既に惚れそうだ。
ともかく、
私は言われたとおり、筆を握ってみる。
もともと手を強く握れば痛む程度だったこともあって、特に絵を描くことに支障はなさそうだ。
結構ちゃんとした処置だった。
私が感心すると、
「虹庵先生から、傷の手当てについては一通り教えてもらってるからな」
と、彼は言った。
斬り合いになって、自分や他の者が傷ついた時のため──というところだろうか。
若いのに、なかなか一人前の武士らしい心がけだ。
「それで、いつもそんなものを持ち歩いているのかね?」
塗り薬を示して私は訊いた。
「ああ、これは──持ち歩けって言った奴がいるんでね」
「女か」
「……まあ、女だな」
薬を彼に持たせた相手を思い浮かべているのか、優しい目つきになって円士郎はそう言った。