金魚玉の壊しかた
父は切腹の前夜まで、

伊羽憎し、
いつか父の無念をお前たちで晴らせと言い続け、


そして逝った。


その頃には父の行ってきた汚職やら何やらまで明るみに出てしまっていて、

痛くもない腹どころか
探られた腹の底の底まで真っ黒だったことが判明していたので──



私たち家族にしてみれば、

先祖代々の由緒正しき雨宮家という家柄を地に落とした上、

懲りずに私たちにまで仇を討てなどと……


迷惑千万な話も良いところだった。



実際、

家禄を減らされ奉公人たちに支払う分にまで困るようになって、
我が雨宮家は見事に没落した。

あっという間に借金まみれだ。


十六の娘だった私にも被害は及び、

その頃持ち上がっていた良縁の縁組み話が一瞬で破談になった。




父には気の毒だが。

跡目を継いだ兄を始め、
家族はあまり同情的ではなかったと言わざるを得ない。



やってくれたという感じだ。
< 7 / 250 >

この作品をシェア

pagetop