金魚玉の壊しかた
しかし私は、何だか清々していた。

武家の格式だの
家柄だの、

がんじがらめになっていたものが一気に無くなったのだ。


どうせ嫁のもらい手がなくなった女など、家にいても部屋住みの居候身分と何ら変わらない。

私は、これまでずっとできなかったことをやろうと単身屋敷を飛び出し──


城下で町屋を借りて一人、絵を描いて暮らし始めた。


十六の秋のことだ。



親戚や家族の者は、
家に不幸が続き過ぎて私がおかしくなってしまったのだと噂した。

私が描く絵というのが皆、奇怪なものばかりで、

見る者の目には異様に映ったからだろう。



私は皆から

「女妖怪絵師」

などと呼ばれるようになった。
< 8 / 250 >

この作品をシェア

pagetop