未来のない優しさ
「俺も、望は好きだったよ。
彼氏がいたからな…安心して側に置けたし」

「なんて狡い…。やな男」

そっと俺の首に手を回すと、優しく体を寄せてきた。

今までなら抱き返してそのまま…。

けれど今は立ったまま腕を回す事もなく望が俺の胸に顔を埋めるに任せている。

特定の女は作らずに遊んでいた俺のスタンスを理解して…。
何度も体を重ねた望。

「望も幸せになれよ」

「ん…」

望は綺麗な笑顔を俺に向けると、

「健吾もね」

そう言って…
ハイヒールの細いヒールで力いっぱい俺の足を踏み付けた。

「うっ…痛い…何するんだよ」

痛みに顔を歪める俺に舌を出し

「別れの餞別。じゃ」

とっとと部屋を出て行った。

「くそっ…」

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