未来のない優しさ
疲労と緊張の浮かぶ健吾の顔に、つらそうな感情と睨みつけるような強い意思が見えた。

「ばかか」

はあ…。
溜息をつく健吾の手が軽く私の額を小突き、同時に触れるだけのキスを落とす。

「自分のせいじゃない事で謝るな」

「…」

「…で、美晴は…俺らの母親から連絡もらって。
俺が柚と結婚するつもりだって聞いて…

頭から猛反対された」

苦笑しながらも、よほど厳しい事を言われたらしいとわかるくらいに落ち込んでいるように見える。

「柚を悩ませるな…。
これ以上不幸にするな。

そう言って譲らなかったよ」

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