未来のない優しさ
昼休みも終わる頃、携帯が鳴った。

部署に戻る途中の階段で出ると

「柚ちゃん。葵です」

「あ…葵ちゃん」

その声を聞いてすぐ、昨日もらった結婚式の招待状を思い出す。

まだ出席するか決めかねてるから…どうしよう。

「突然ごめんね。あの…。私の結婚でマスコミがうろついてるんだけど…柚ちゃん大丈夫かなと思って」

「…マスコミ」

そういえば、今朝健吾も注意しろって…言ってたな…。

「今は大丈夫よ。私なんて普通の会社員だし、追っかけても話題にならないよ」

意識して明るく言ってはみても、マスコミへの恐さは今も残っていて。

「もう大人だし…。何かあっても対処できるから」
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