未来のない優しさ
「葵ちゃんの花嫁姿、見に行くね」

そう自然に言葉が出た。

マスコミに注目される恐さが失くなった訳じゃない。
今でも震えるくらいに不安が体に充満してくるけれど。

自分が背負った人生を切り開く努力が幸せを呼びこんだ葵ちゃんの門出をお祝いしたい。

両親をなくして感情を凍らせた後の辛い日々を知っているから。

「私も…進化しないとね」

強く、負けない。

自分に対して。

あの事故で結婚を望めない体になってしまったけれど。

強くなりたい…。

たとえ健吾がいない人生だとしても。
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