未来のない優しさ
涙と大切な人
①
合鍵を持っている事を私が知って以来、当たり前のようにその鍵を使って私の部屋に入ってくる健吾。
ほとんど同居のように私の側で生活している健吾に、最初は
『自分の部屋に戻ったら?』
と言っていたけれど、そんな言葉は全く無視されて。
今では
「晩御飯何が食べたい?」
と聞いてしまうようになった…。
「オムライス」
とためらいもなく、私の作ったご飯を食べる事が当たり前のように答える
横顔を見つめると、心の中が優しい想いでいっぱいになる。
こんなやりとり、私の人生には訪れないって思ってたから…。
本当は叶えたい。
でも叶わない夢の中にいるようで。
この部屋を出るまであと半月。
健吾の側で笑いながら、世話をやきながら。
毎晩抱かれる喜びに浸っても…いいよね。