未来のない優しさ
「…すごかったな…。俺より声大きかった…」
「…ばか」
まだお互い荒い息の中で抱き寄せられると、私も自然に健吾に寄り添ってしまう。
健吾の胸に唇を寄せると、ほっとして穏やかな気持ちが溢れる。
「…健吾…。まだ結婚するつもり?」
小さな声でつぶやくと、その瞬間に健吾の体が強張ったとわかる。
健吾の胸に埋めていた顔を上げると、おそらく…怒りをぐっと抑えている瞳に見つめられてしまった。
「何度も言わせるな。なるべく早いうちに結婚するからな」
はぁ。と溜息をつかれても…。
「何度も言うけど、私は結婚しないから。
…健吾には、他に…」