未来のない優しさ
健吾は、抱きしめてくれていた腕をすっと解くと、私を仰向けにして抑えてきた…。

悲しく揺れる光が瞳に溢れてる。

そんなに辛そうな顔しないで。

「結婚したくないんじゃなくて、できないの」

意識して軽く言ってみる…。

言わなくて済むなら言いたくなかったけれど…健吾を私から解放してあげるには…ちゃんと言わないと。

震える指先で吾の頬をゆっくりなぞると、怪訝そうに眉を上げる…その癖、高校の時から変わらないね。

「あの事故で…体中傷だらけになって…あ、今も見てるか…」

ははっと笑ってみせても、健吾の表情は動かなくて。

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