未来のない優しさ
「…傷痕なら、俺だけが見れるっていう恋人としての証だって思ってるし、何度でも傷痕にキスしてやるから…気にするな」

「ん…。健吾にしか見せないよ。
この先も…」

「じゃあ、気にするな」

「見た目の傷だけじゃないの」

ああ。

誰にも言わずにいた事を口にするのがこれほどつらいって思わなかった。

せめて…泣かずに言えるなら…。

「あのね…。あの事故で私の体の中も傷だらけで…。

ポンコツになった私は…

子供を産めない体になっちゃったの…。

ごめんね。

だから結婚できない」

無理だった…。

涙が溢れて溢れて止まらなくて。

明るくふっきった言葉で伝えるなんてできなかった。

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