未来のない優しさ
健吾の表情を見たくなくて…。

うつぶせになって。

涙をシーツに流して声を押し殺した。

普通に結婚して、愛する人の子供を産む事は諦めたはずなのに。

実際に口に出して言うと、とことん私を追い詰める。

どうして…。

私の心は強くなれないんだろう。
いつまで、叶わない夢を捨てられないんだろ…。

溢れてくる涙が、次第にシーツの染みを大きくしている中で、そっと背後から健吾が抱きしめてくれるのを感じた。

首筋に柔らかな吐息を感じると、更に涙が溢れてくる。

優しく私の胸の傷痕をなぞる手を握ると、ぎゅっと力強く握り返してくれる。

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