未来のない優しさ
大和君の体が震えている…。
私の気持ちを気遣って、笑って軽く言ってくれるけれど心が折れてるのがわかってしまう。

ずっとずっと…。

健吾とは比べものにならない時間を一緒に過ごして、私がちゃんと生きていけるように支えてくれたのに。

私が大和君の深い気持ちを傷つけた。

私の目に溢れる涙を止めるなんてできなくて、目の前の彼の顔がぼやけて見える。

「私…健吾が好きだけど…。大和君の事も大切…」

「うん…」

「大和君の幸せを、私には作れない…」

「あぁ…」

「だから…一緒にはいられない」

くぐもった涙声が…私には必死に出した声だけど…。

大和君に届いたのかわからないけれど、控えめな笑顔を私に向けているのはきっと。

「…川原の幸せも、俺には作れないんだな…」

優しい…。

優しい大和くん。

健吾とは違う意味で、一番好き。

でも、ごめん…。
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