未来のない優しさ
女には不自由のなかった自分の過去を振り返ってみても、望が俺の中に築いた位置は他の女とは違うと自覚している。

柚との記憶を凍らせて忘れようと、無駄に仕事に励んでいた俺と似ていた望。

恋人の愛を十分過ぎるほど受けていても、同じくらいの愛を恋人に返していても。

仕事への理解のなさで、いつも悩んでいた。

恋人が何故望の仕事にいい顔をしないのかも、望が弁護士という仕事にどうしてこだわるのかも、未だにわからないけれど…。

俺と望は体を重ねる事で互いの心の小さな隙間を埋めていた。

今でも、望の存在には感謝しているし、彼女にとっても俺がそうであったらと思う。
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