未来のない優しさ
「川原か俺か…。
専務にしてみれば、トラブルの処理に支障が出なきゃどっちでもいいらしいから…。

たまたま前に一緒に仕事してたから、俺に春井のチャンスをくれたんじゃないかな」

「…」

膝に置いた両手をぎゅっと握りしめる。

隣りの大和君の膝に置かれてる両手も同じように震えてるのに気付かなければ、きっと

『私にもチャンスなのに』

って文句を言ってるかもしれないけど…。

その震えが私の軽はずみに口走りそうになる言葉をおしとどめる。

「川原…」

すっと落とされる悔しそうな大和君の視線は、さらに私の口を重くする…。
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