未来のない優しさ
その日どうやって家まで帰ったのか覚えてない。

気付いたら家で、母さんの前で静かに泣いていた。

そして…。

翌日の朝。

バスケ部の合宿に向かう健吾を見送りに家まで行った。

もともと見送る約束をしていたけれど、何だか行きたくなくて…。

機嫌の悪い私を怪訝そうに見る健吾。

「…何かあったのか?」

「…」

「合宿に行くのが気に入らないのか?」

「…」

普段と変わらない口調の健吾に、イライラして黙り込む私にため息をついて

「帰ってくるまでに機嫌なおせよ」

鞄を手に部屋を出ようとする健吾の背中に

「嘘つき」

昨日あれだけ泣いたのに
また溢れた涙を流れるままにしてつぶやいた。
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