未来のない優しさ
振り返る健吾にぶつける言葉は止まらなくて、

「昨日、バスケの練習だって言ってたのに…
マネージャーと映画観に行ってたの…見たもん」

「あ…」

瞬間気まずそうな顔をした健吾だけど、

「…それで機嫌悪いの?」

からかうように言う態度。
全く悪いと思っていないとしか感じられない表情が、鋭く私の気持ちを傷つける。

「怒る…?

そりゃ嘘つかれたら怒るよ…。

会いたいのずっと我慢してたのに浮気されて」

「してない」

次第に声高になる私とは対称的な落ち着いた健吾の声が聞こえたけど、全く聞き入れるなんてできない。
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