未来のない優しさ
そのまま家を出て、バス停までのほんの5分が私と健吾が恋人として歩いた最後の時間だった。

「柚は…俺が別れたいって言うと思ってる?」

「…」

「マネージャーにのりかえるって思ってる?」

「…わからない」

私に背中を向けて歩き続ける健吾に必死で追いつきながら、心はぐさりぐさりと健吾のきつい言葉を受け止めて。

浮かんでくる涙が視界を揺らす。

「何でわかんないんだよ」

投げ捨てられる言葉に震えて俯いて…。

喧嘩なんて今まであまりなかったから、健吾の態度にどう応えたらいいのかもわからない。
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