未来のない優しさ
大切な人と私の臆病




「…柚?どうした?
気分悪いのか…?」

「あ…」

シャワーを浴びた健吾の顔が私の目の前に。

ぼんやりと過去をさまよっていた自分の心を呼び戻すと、あの頃と変わらない整った健吾の顔の輪郭に手を伸ばした。

「…良かった」

「…何?」

思わずつぶやいた私に目を細める健吾。
頬を撫でる私の手を掴んで、手の平にキスをしながらも、視線はしっかりと私から離れない。

「また会えて良かった…」

事故の直前の健吾の瞳の冷たさを思い出して、悲しさばかりの胸の内を忘れたくなった。

健吾の首にしがみついて
肩に唇を寄せると、健吾の温かさを感じてホッとする。

あの日の健吾じゃない…。

「また思い出してたのか?」
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