未来のない優しさ
大切な人と私の臆病
①
「…柚?どうした?
気分悪いのか…?」
「あ…」
シャワーを浴びた健吾の顔が私の目の前に。
ぼんやりと過去をさまよっていた自分の心を呼び戻すと、あの頃と変わらない整った健吾の顔の輪郭に手を伸ばした。
「…良かった」
「…何?」
思わずつぶやいた私に目を細める健吾。
頬を撫でる私の手を掴んで、手の平にキスをしながらも、視線はしっかりと私から離れない。
「また会えて良かった…」
事故の直前の健吾の瞳の冷たさを思い出して、悲しさばかりの胸の内を忘れたくなった。
健吾の首にしがみついて
肩に唇を寄せると、健吾の温かさを感じてホッとする。
あの日の健吾じゃない…。
「また思い出してたのか?」