未来のない優しさ
「俺が後悔してるのは…。
柚以外に愛想よさばかりを振りまいて、肝心の柚の事をないがしろにした事だ」

そっと…苦しみを隠すように目を閉じている健吾。

「いつでも…何があっても柚は離れる訳ないって思い込んで…。

それが甘えだって気付かずに、誰にでもいい顔して。

柚が事故のあと、誰も居場所を教えてくれなかった…」

ふっと大きく息を吐いた健吾は、私の両頬を掴み顔を寄せると、暗い目を私に向けて唇を合わせた。

「ん…。健吾…?」

私がここにいる事を確かめるような深いキスに、どんどん息が苦しくなる。

何度も角度を変えながら食べてしまわれるような熱さが私の体をドクドクとかけめぐる。



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