未来のない優しさ
「柚だって、仕事で昇進するよりもここで俺の世話してるほうがいいだろ?」

他に選択肢はないとでもいうように余裕で笑う健吾。
この落ち着いた言葉と表情で現実的とは思えない提案をされると、思わず頷いてしまいそうだけど

「絶対無理」

無理に決まってる。

突拍子もない健吾の言葉が、一瞬私の気持ちをぐっと引き寄せて甘い夢をみてしまうけれど、同時に浮かぶ現実。

「仕事しなきゃ、生活できない。今から転職なんて難しいし辞めるなんて論外。
健吾の世話なら、彼女に頼めば?」

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