未来のない優しさ
「いつもいつも身につけているから、相当大事な物だってわかってたけど、
一度だけ…
『大事な人を信じられなかった戒めの指輪です』
って悲しそうに言ってた」

「戒め…?」

「そう。大切な人を信じなかった自分への戒め。
事故にあったのも、罰だって…」

友美先生は、俺から顔をそむけた。
つらそうな声は最後には涙声になって…。

この人は、何度も柚の為に泣いてきたんだろうと気付く。

「柚のせいじゃない…」

膝に置いた手に顔を埋めて、ようやく出た声は俺の声なのに、まるで他人の声のようだった。

「柚一人だけを…大切にしてれば…」

< 297 / 433 >

この作品をシェア

pagetop