未来のない優しさ
俯きがちな顔を上げると、興味深そうに見つめる友美先生と目が合った。

「ここ最近、柚ちゃんから仕事以外の話題が出るのよ。

診察に来ても、早く帰って夕飯の準備しなきゃとか…。

胸元のキスマークをからかったらおろおろしてた」

くすくす笑いながら俺に向ける瞳から、その事を喜んでるのがすぐわかる。

「事故にあってから…生きるだけに生きてきた柚ちゃんに、本当ならとっくに経験してたはずの人生をあなたが与えてあげて」
真っすぐ見据えられて。
身動きできずうめきそうになるのをぐっとこらえた。

「俺にどうしろと…。
あの事故にあったのは、もともと俺のせいで…。
柚の人生をぶち壊したのも俺なのに…。
それでも手放せない…」

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