未来のない優しさ
だから。

真田さんの言葉が嬉しかった。

健吾が表に出している姿の向こうにある、本心や
苦しみをちゃんと見抜いてくれていた人がいて、
救われた気持ちになる。

私が完全に健吾の人格を変えてしまったって
うしろめたかったけど…
真田さんの言葉に少しだけ、重荷を降ろせた気がした。

「…何いい雰囲気作ってるんだよ」

突然腕をぐっとひっぱられた。
頭上の声は拗ねていて、
しんみりとしていた私と真田さんの間に割り込んできた。

「健吾…」

見当違いの声に驚いた私を腕の中に抱いて、

「お前には彼女いるだろ?」

と相変わらず見当違いないいがかりをつけてる。

「ふふっ」

なんだかおかしくて。

真面目に拗ねてる健吾の姿に思わず笑いがこみあがってくる。

「…妬いちゃった?」

くすくす笑いながら言うと、真田さんまでもが

「…その顔、携帯の待受にしたいくらい貴重だな」

とさらに煽る。


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