未来のない優しさ
事務所の部屋で、明日の裁判の最終確認をしていると、ゆっくりとドアが開いて
「ちょっといい?」
望が入ってきた。
退職前で忙しく、なかなか顔を合わせる事もなく
お互い仕事に追われていた。
細身のスーツに何故かスニーカー。
事務所内にいる時にはこのスタイルで走り回っている彼女も、さすがに疲れが顔に出ている。
「忙しそうだな」
声をかけても、肩をすくめて笑うだけ。
愚痴を言わない望の、どんなに忙しくても背筋を伸ばしている綺麗な姿が妙に懐かしく思える。
「…たくさんの案件回してしまってごめんね。
健吾もかなりの量を抱えてるのに」
「…もう限界だ。
これ以上俺の時間を奪うなよ」
「ふふっ。それは保証できないなぁ」
望は、ソファに腰掛けると手にしていたいくつかのファイルや雑誌をテーブルにおいて、申し訳なさそうに笑った。
「ちょっといい?」
望が入ってきた。
退職前で忙しく、なかなか顔を合わせる事もなく
お互い仕事に追われていた。
細身のスーツに何故かスニーカー。
事務所内にいる時にはこのスタイルで走り回っている彼女も、さすがに疲れが顔に出ている。
「忙しそうだな」
声をかけても、肩をすくめて笑うだけ。
愚痴を言わない望の、どんなに忙しくても背筋を伸ばしている綺麗な姿が妙に懐かしく思える。
「…たくさんの案件回してしまってごめんね。
健吾もかなりの量を抱えてるのに」
「…もう限界だ。
これ以上俺の時間を奪うなよ」
「ふふっ。それは保証できないなぁ」
望は、ソファに腰掛けると手にしていたいくつかのファイルや雑誌をテーブルにおいて、申し訳なさそうに笑った。