未来のない優しさ
明るく問いかける望は、今までになく綺麗な表情。
俺の側にいても、悩みを含んだ声や笑顔しか出さなかった彼女が…。

まとっていた切なさを剥いで、幸せを滲ませながら俺の前にいる。

「…綺麗に笑うようになったな」

思っていた以上に優しい声の自分に驚いてしまう。
きっと顔も、声と同じくらいの優しい表情をしてるんだろうと思うけれど
それでも構わない。

望が幸せなんだと思える事に、ここまで安堵する自分が意外で…嬉しい。

「前から綺麗だったけど、もう怖いもんなしって感じの自信が出てるぞ」

「ふふっ。そうかもね。
…彼と結婚決めたら、今まで突っ張って意地になって仕事してた自分を捨てる事ができて…」

「…仕事、嫌々こなしてたのか?」

「嫌々じゃないけど。

親に対する意地かな…
うちの両親医者でね。
医者か弁護士にならなきゃ人として認めないって感じの人間なの。

弁護士にも、自分の意志だけでなったんじゃなくて…。

家族として認めてもらうために必死で合格したの」
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