未来のない優しさ
視線をさまよわせながら寂しく語る望が初めて見せた弱さ。
一言一言言葉を選びながらの様子は、彼女の細い体を更に細く見せる。

「彼は…気付いてたの。
本気で弁護士の仕事に励んでたなら反対はしなかったけど…。

そうじゃなくて、親への意地だけなら人生もったいないって」

「そうか…。
で、辞めるわけか」

「うん…。
ちょうど、健吾との付き合いをクリアにしたし、彼が仕事でアメリカに行くから着いて行くの」

すっきりとした輝きの増した望の笑顔を見れば、疑う余地はないけれど

「愛してるんだ…?」

からかう視線と言葉を投げかけると

「うん…。

健吾には悪いけど…健吾との事は後悔してるの。
彼を裏切り続けてた事。

その事に気付いてたって言われて余計苦しかった」
< 333 / 433 >

この作品をシェア

pagetop