未来のない優しさ
「ま、座れよ。
コーヒーでも持ってこさせるから」

そう言って、内線でコーヒー二つを秘書に頼んだ。
美晴は、笑わない顔のまま。
ベビーカーに眠る杏をちらりと見てソファに腰をおろして溜息をついた。
部屋に来た時に見せていたあからさまな怒りはないけれど、顔色はあまりよくない。

「…写真が出る事は、連絡もらってたんだ。
柚も知ってる」

「え…?」

美晴の向かいに座って、
ゆっくりと話し出すと、
不安げな目が俺を見る。

意外だったんだろう。
言葉もなく、膝に置いた手をぎゅっと握ったまま動かない。

「高橋社長…知ってるな?昨日連絡があったよ。
葵さんも載ってるはず…」

手元の週刊誌をめくると、柚と俺のページの後に葵さんと相模さんの写真。
あの事故の関係者を載せて、当時から今までの流れを記事にしている。
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